1粒のお米がおにぎり1個に
私たちの棚田では、苗は1本植えといって、
大きく育てた苗を1本ずつ植えることを理想としています。
今年は1本、ないし2本植えに徹しました。
1本の苗は、当然、1粒のもみが育ったものです。
育ち方によって多い、少ないはありますが、
大体1本の苗から取れる米粒は2000粒前後といわれます。
これは2本植えしてもあまり変わらないということだそうで不思議です。
2000粒のお米は、ちょうど小さめのおにぎり1個になります。
1粒が2000倍です。
稲作を始めた弥生時代の人たちの感動はいかばかりであったかと思います。
棚田では、6月末に田植えした苗が暑さとともにぐんぐん伸びて、
分けつといいますが、1本の苗が数本の扇状に広がりながらお米づくりの準備をしていきます。
この7月から8月にかけての稲の姿は生命力にあふれ、緑一面のそれは美しい姿で、
お米は夏草であることを教えてくれます。
そして稲の足元ではいろいろな生き物たちが元気いっぱい、トンボも飛び交い、
田んぼの中はいのちがあふれている感じです。
やがて秋の気配と共に穂が伸び、子づくりの季節となり、小さなお米の花を咲かせます。
受粉のピークはお昼前ごろのようで、
この時期は子づくりの邪魔になるので、田んぼに入らないようにしています。
もっぱら周りの草を刈ったり、実りの季節に備えて
イノシシ対策として田んぼの周りに網を張ったり、電柵をめぐらす作業をします。
今年は分けつの状態もよく、豊作が予想されます。
周囲の田んぼの稲刈りが終わった11月ころ、ようやく私たちの棚田も稲刈りとなります。
1粒のお米がおにぎり1個と思うと田植えも、その後の作業も楽しく、
毎日のご飯もありがたくなります。
お米づくりの一番の効用は、
いのちの巡りを感じながらお米のありがたさを実感できることではないかと思いながら、
田んぼ通いを続けています。
竹内 せつ子