必要ですか?子宮頸がんワクチン

馬場利子 - 著書
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(隔月刊湧(2010年11月15日発行)掲載原稿
馬場利子

●がん予防の『救世主』なのか?

 全国各地、国も自治体も財政難の今、「公費助成による子宮頸がんワクチン接種」が行政サービスとして一気に拡大しようとしています。

 “撲滅”が大好きな日本人ですから、このワクチンで子宮頸がんにならないとなれば、医学の進歩として大歓迎されることは請け合いでしょう。

 しかし、本当にこのワクチンはがん予防の『救世主』なのでしょうか?

 

 子宮頸がんの原因がウイルスで、そのウイルスに対するワクチンがあると私が知ったのは、女優の仁科明子さんがご自身の体験から、同じ病気で苦しむ人がなくなるようにと、国にワクチンの承認を働きかけているという報道からでした。
その時思ったのは“がんの原因になるウイルスはどこにいて、どの様にして移るのだろう?”という事と“そのワクチンの副作用はないのだろうか?”という程度で、特に関心を持って調べてみる事もしませんでした。

 

 というのも、私自身は地域で行われる健康診断の際の専門医の講話で「子宮頸がんは検診で見つけられる癌で、毎年検診を受けていれば、早期に発見し、治療が出来る癌です」と聞いて以来、毎年、子宮がん検診を受けているので、万一、癌が発見されてもそんなに手遅れにならない段階で治療を受けられるだろうと思っているためです。
“薬や特効薬が好きな人には、がん予防薬として歓迎されるだろう”とは思いましたが、その費用は高額ですから、多くの人があえて、わが子に接種する事はないだろうと思っていました。

 

 ところが、患者さんたちの働きかけが功を奏したのか、昨年(2009年)子宮頸がんワクチンが承認されると、今度はそのワクチンが高額であるから国が接種費用を助成するようにという要望が出され、産婦人科医からも近年若い世代で子宮頸がんに罹かる人が増えているからと、このワクチンを奨める声が上がり、何とワクチン接種を急がせるようなTVコマーシャルまで流れるなど、異様な速さでワクチンの話題が広がり、政策も進んでいく気配でした。

 

 果たして、実際に子宮頸がんになる人は多いのだろうかと調べてみると、女性のがん罹患率と死亡率の統計では、子宮頸がんの罹患率は10万人あたり11人(最も多い乳がんでは10万人あたり64人、2位は胃がんで54人、3位の結腸がんは45人、肺がんで32人、子宮頸がんは10位)。

死亡率では10万人当たり4人(最も死亡率が高い胃がんは10万人あたり27人、次ぐ肺がんは26人、3位の結腸がんは21人・・)で、子宮頸がんの死亡率は部位別がんの9位(2005年)ですから、国としてがん予防対策を講じる必要があるのは、子宮頸がんより先に死亡率の多いがんの対策が執られて良いはずです。

もちろん、対象となる人が少ないからといって、予防を疎かにして良いはずはありませんが、ウイルス一つを取り出して病を根治しようとする方法は、体全体を整える健康感から考えると、生きるバランスを崩す事になる気がします。

 

 病気になった人に薬を使うのは治療として必要な時もあるでしょうけど、病気にならないためにウイルスを叩いてしまおうというのは、食肉用家畜の飼育に予防的に抗生剤を投与するのと同じように不自然で危険なものに感じられます。

 

  一人で思いを巡らせていた私が、子宮頸がんとワクチンについて詳しく知る事になったのは、ワクチントーク全国(事務局・東京)という市民グループのメンバーから、国が150億円の予算を取って、子宮頸がんワクチン接種に補助金を出すと聞いた時でした。

このワクチントーク全国は、インフルエンザワクチンの集団接種ボイコット運動を主導した人々や、ワクチン被害者とその支援者だけでなく、根拠ある医療を実践しようとする医師グループ、自治体議員や職員、市民などが参加する団体で、今年の夏(8月)に子宮頸がんワクチンの学習会を開催し、ワクチンの有効性に対する疑問や原因ウイルスの特性などについて、専門的な学習と討論を行っていました。

その情報を伝え聞いていた私は、専門家の医師が指摘するワクチンの問題点や原因ウイルスの特性や子宮頸がんという病気について、地域の人々にしっかりとした情報を伝えたいと思うようになったのです。

 

 

●厚生労働省への申し入れ書

 そして、その想いが具体的な行動になったきっかけは、ワクチントーク全国が9月1日に厚生労働省に提出した申し入れ書を読んだ時でした。

 

  その申し入れ書には、子宮頸がんウイルスは皮膚や粘膜に常在するウイルスであり、仮に子宮頚部で感染を起こしたとしても、そのままがん化することは稀で、ほとんどの場合、生体の免疫機能や生体の代謝によって、ウイルスは消えていく場合が多い事。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスには150~200種類のウイルスの型が在り、今回、日本で承認されているワクチンはその中の二種類(16型と18型)に対応しているだけで、全てのウイルスに効果があるわけではない事や実際は海外でも臨床実験が2006年に始まったばかりで、実績評価が充分でない事。

また国の審議会でも「実際にこのワクチン導入が全国レベルで子宮頸がん患者・死亡の減少につながるかは今後の長期にわたる調査研究が必要である」と明記されている事。

このウイルスは性交渉によって感染するため、すでに性体験のある人には効果は無く、ワクチン接種適応年齢が性体験を持つ前の少女とされている事など、多岐にわたる論証と主張が書かれ、この様な未完成なワクチンに公費を支出する事は止めるよう求めると結ばれていました。

子宮頸がんワクチンにについて、全く知識がなかった私も、この申し入れ書を読んだだけでも、このワクチンが『夢のがん予防薬』でない事が分かりました。

 

 私はこの申し入れ書を、県内外の繋がりのある団体や人に送り、少しでも情報の共有が出来るように動くと、それに対して「もう少し詳しい資料はありますか?」「私の町では、無料で受けられるように議会に要望書を出した市民グループがあるので、医学的な資料があれば欲しいです」という連絡を受けるようになりました。

また、地域でも小・中学生の女の子を持つお母さんたちから、「ワクチンの費用が高くても癌にならないためには受けた方が良いですよね」という質問がでるなど、やはり、もう少し詳しい資料を作らなくてはならないと痛感して、 9月末にワクチントーク事務局の人を揺り動かすようにして8月の講演記録を冊子にする作業に入りました。

 

 一日も早く、子宮頸がんワクチンの詳しい資料を発行できるように、テープ起しをし、編集作業に集中していた私に、何と、私の住む静岡市でもワクチンの公費助成の要望が上がり、議会で検討されるという情報が入ってきました。

私は心底驚き、取るものも取りあえず、編集作業で知りえた情報とワクチントーク全国が国に提出した申し入れ書を参考に、静岡市議会と市長に『子宮頸がんワクチンの公費助成は慎重な審議と実施に当たっては有効性を確認する事を求める要望書』を提出するために、市役所に飛んでいきました。

 

 幸いにも、担当課の職員さんから「国が予防接種の副作用に対する救済をしない段階で、すぐに静岡市が推進する事は考えていません」という返事をもらい、転げるように役所に飛んで行って良かったと安堵しました。

 

  未完成なワクチンに巨額の税金を投じて、12歳の少女全員の免疫力に負荷を掛けるような政策が本当に必要なのか、多くの人が関心を持ってくださるようブックレットの発行に今、全力を挙げています。

 

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最終更新 2011年 8月 21日(日曜日) 13:28