加工・調理済み食品が命を縮めるワケ

馬場利子 - 食べもの
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2007年1月1日 通信より

食べ物の知恩・・・(転載記事) ≪短命の食事 長命の食事≫

丸元 淑生 まるもと よしお 
1934年大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。

 

 アメリカでは複数の研究が、トランス型の脂肪酸が原因で死亡している人の数は、年間3万人、心臓病で早死にする人の7~8%という一致して推定値を出している。

 トランス脂肪酸は、植物油に水素を添加してマーガリンショートニングを作り出すときに生まれるものなので、マーガリンが出現する1911年以前の摂取量はゼロだった。

 自然界にはほとんど存在しないこの脂肪酸は、悪玉コレステロール値を高め、善玉のLDLコレステロール値を下げる。血液中のコレステロールの数値を非常に悪くしてしまうのだ。

 そして、心筋梗塞と脳卒中の引き金となるリスク・ファクター、リポプロティン・スモールAの血中値を高める。これだけ悪い働きを併せ持っている脂肪酸は、他には存在しない。

 トランス型の脂肪酸の害は、1960年代から多くの研究者によって警告されてきたけれども、消費量は減らずに増えている。
マーガリンの消費量は横這いだが、ショートニングの消費量が増え続けているからだ。

 ほとんどの消費者が、その事実に気づいていないのは、ショートニングが家庭で使われるものではないからである。

 ショートニングは、クッキーやスナック菓子、大量生産のケーキ類に使われてきた。
家庭で料理に割く時間を短縮させてくれる新しいタイプの加工食品や調理済み食品など、便利な食品の出現で消費量が増加し、現在、アメリカの調査では1人当たり1日十数㌘以上という消費量になっている。
環境汚染物質や、食品添加物とは桁違いの量を、毎日のようにとっているのである。

 それが心臓血管障害だけでなく、糖尿病のリスクも高めているのだが、1960年代に行われた世界の7カ国食事の調査では、日本とギリシャは、トランス脂肪酸の摂取量はゼロだった。

 そして、その2カ国が最も健康度が高く、冠状動脈性心臓病による死亡率は最も低かった。

 それが、かつての日本型の食事の特徴だったのだ。40年前の食事に戻るのは難しいとしても、便利な食品への依存度を下げるべきだろう。

 

最終更新 2011年 8月 21日(日曜日) 11:54