喜びのうちに食べられる幸せを重ねて神様からの賜物を知る

馬場利子 - いのち
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ぐるーぷ・みるめの総会に寄せて

 

2008年6月26日
馬場利子

みるめの活動をはじめて17年になりました。
食べ物を作ることに喜びを感じて作って下さる生産者(人)をみなさんに紹介し、一緒にそれを食べたい…という想いではじめた活動が、こんなに長く、ほとんど思いを変えることなく続けられたことを心から嬉しく思っています。
総会前に、みるめの1つの食材、牛乳(乳製品)のことで宝物を得たような驚きと感動に出会いました。そのお話をみなさんにお伝えしたいと思います。

ホクレン(よつ葉)の牛乳を受け取るまで 

 私たちは、北海道の酪農業者が共同して組織したホクレンから、よつ葉の乳製品を届けてもらっています。その経緯には、長い道程がありました。
1986年頃 私の恩師ともいえる故望月維治さん(神田精養軒創業者・元社長)のご縁で、ホクレンの理事長さんにご紹介いただいてホクレン(よつ葉)の酪農について知ってはいましたが、当時、私が住んでいた浜松には、まだ周辺に乳牛を飼う酪農家が何軒もあり、いくら理想的に作られた牛乳であっても、遠く北海道から牛乳を運ぶことは“食べかた”に反しているという思いから、地場の牛乳を探すことから始めました。

どんな牛乳がのみたいか…

  私の気持ちは唯一つ、『大切に育てられ、牛も幸せに過ごしている母牛のお乳を分けてもらいたい』ということでした。
当時、訪ねた酪農家3軒は、どこも牛は牛舎につないだまま。牛はどこにも行けず、エサを食べて乳を出すだけ。牛舎は遠くからも独特の強い臭いを放っていて、飼料は60㎏の飼料袋が雨ざらしのところもありました。
“この牛乳を飲んでも、私たちは健康には過ごせないだろう”と、それ以後1年近く、牛乳を買うこともしませんでした。幸いその後、浜松でも、静岡でも、近郊で心をかけて育てられた牛から牛乳を分けてもらうことができていますが、ホクレン(よつ葉)の乳製品を取り扱いたい…と動いたのは、多国間協議によって、乳製品の輸入が自由化され、安いヨーロッパの乳製品が多量に日本に入ってくると決まった時でした。
チェルノブイリ原発事故後、ヨーロッパの乳製品や菓子、チョコレートなどに放射性物質(セシウム137)が事故の影響で検出されていることを私は知っていましたし、自分たちで輸入食品を測定もしていましたから、“なぜ、今、輸入が自由化され、日本国内の小規模酪農家を圧迫するような政策がとられるのか”と二重の不安を感じたためです。

北海道は遠い、しかし国内酪農家を支えたい…

  もちろん、日本中の消費者団体が輸入の自由化に反対したことはいうまでもありませんでした。
しかし国は“各国協調”を理由に「安い乳製品は国民にとっても、利益である」としたのです。
“静岡から北海道は遠いけれど、国内産の乳製品を紹介し、購入することで国内の酪農を支えることができたら…”と動き、企業でも団体でもない私個人の契約で、静岡に初めて、よつ葉の乳製品の共同購入がはじまりました。
そして、ホクレンの招きで北海道の生産者、生産地見学にも行かせてもらい、みるめのみなさんに報告したのは1992年だったと思います。今、みるめでは高橋牧場のビン牛乳を省資源、フードマイレージなど環境面でも安心で、味、価格の面でも「幸せな牛乳」を飲むことができていますが、よつ葉の1㍑の非遺伝子組み換え飼料によるノンホモ、低温殺菌牛乳も月1回届いています。みるめには、ビン牛乳があるためよつ葉の牛乳を購入する人はとても少ないのが現状ですが…。

私たちはすでに飲んでいた!!
03  2年前から、ホクレン・よつ葉では、共同購入グループの会員が年々減少していくことや商品作りについて、消費者と企業が一緒に考える「よつ葉共同購入事業推進会議」を開いて意見交換を続けていますが、(みるめも可能な限り参加させてもらっています)その分科会のメンバーが北海道の現地を訪ね、生産者の紹介をする報告が届きました。
遺伝子組み換えでない飼料100%、粗飼料を多く与えること、ノンホモ、パスチャライズ牛乳は、よつ葉の共同購入から生まれた牛乳で、一般には売られていません。

<その生産者は27軒>
◎自家製の牧草74%(この比率はとても高いです)農水省生産局賞受賞の大和牧場。
◎完全放牧にして、牧草を育て、飼料代が半分近くになったという高野牧場。
◎牛舎がなく、冬も放牧。子牛には代用乳を使わず母乳から飲ませて育てている井田義国牧場。 tak_pre_p_01など、その報告を読み進むうちにドキドキ、ワクワク、“すご~い!!”
“素敵!”と思わず声をあげそうになりました。そして最後の牧場名を見て私は本当に声をあげました!
「うそ?! 本当?! すごい!」斉藤晶牧場
交配も分娩も自然。牛が自力で荒地を牧場にしていったという「牛が拓く牧場」について、私は知人である地湧社の社長、増田さんから、熱く熱く、牧場の様子を聞いていた“その牧場”だったのです。
2001年私の稚拙な経験を本にと請って下さり、増田さんにはいろいろな事を教えていただいているのですが、斉藤牧場について伺ったのはその頃でした。
私が「牛は人のために自由に恋愛することもできず一生過ごすなんて悲しい」と話すと、「斉藤牧場は、自由恋愛、牛任せで妊娠率99%。母牛はおっぱいが張ると自分で搾ってもらいに広い牧場から集まってくるんだよ」と聞いていました。
“すばらしいなぁ、そんな幸せな牛のお乳を分けてもらえたら、私たちもどんなに幸せだろう…”
と思いながら、北海道に訪ねて行くことも、その牧場から分けてもらうことも、私には遠すぎる夢に思えて、日々に明け暮れていたのですが、なんと、その斉藤牧場は、よつ葉の私たちのところに届いている牛乳にお乳を提供してくださっている一軒だったのです!!夢はすでに叶っていたのです。気がつかないだけ、知らないだけで、願いは叶えられていたなんて、信じられない、本当に素晴らしい喜びでした。
牛も幸せに生き、私たちにいのちを与えていてくれる…「斉藤さん、この牛乳をよつ葉の牛乳にして下さった方たち、届けて下さるみなさん、ありがとうございます!」
私の信条である『夢は願い続け、行い続ければ、必ず叶う…』事を、再び確認する出来事でした。
私たちも、こうした自然の摂理に従って生きる生産者の方たちのように、この場所で心を紡いで何かを育てて生きたい、と…総会前に改めて思わせていただきました。
1_20050808_P1jpg tak_adr_img『牛も私たちも幸せな牛乳』を求めて訪ね歩いてから21年目の出来事でした。
神様、心ある人と出合わせて下さり、 ありがとうございます。

 

 

“斉藤牧場の牛乳について”お詫び

 

先日の総会にて「よつ葉のノンホモ牛乳」の生産についてみなさんにお話をさせていただき、資料として、6月26日のみるめ通信にも報告を入れた「斉藤晶さんの牧場」は実際は よつ葉 の生産者ではないことが分りました。

私が『よつ葉の生産者 見学の報告記』を読んで、早とちりをしてしまって、喜びのあまり、ホクレンに確認することもなく、皆さんにお伝えしてしまいました。

自由恋愛 100%牧草を食べ、子牛も母乳で育てる“幸せの牧場”は生産者訪問ではなく、「牧場の見学」だったそうです。誤報、すみませんでした。

私自身も 大感激してしまい、みなさんに牛乳の大宣伝をすることになってしまい、ご迷惑をかけて、申し訳ありませんでした。

私の誤報が分ったのは別件で、ホクレンと連絡をして くださった伊藤さんが「斉藤牧場の牛乳が届いていたのですね・・・。」と話して下さったお陰です。そうでなければ、ずっと そう思い込んで誤った情報を皆さんに伝えたままになってい たところでした。みるめもプラムフィールドも関わる人々の力に支えられて、修正し、補い合って歩んでいます。本当にありがたいことです。

ひとえに、私の粗忽さをお詫びし、お許しいただければ嬉しいです。

いつか、きっと ずべての牛たちが 斉藤牧場の牛たちの幸せに近づいていくことを願って。

2008年7月1日  馬場利子

 

最終更新 2011年 8月 20日(土曜日) 18:04