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くらし

子どもと環境に関する全国調査

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2011年1月13日
環境カウンセラー 馬場利子

環境と子どもの健康について、関心を持ってくださっている皆様へ

 

昨年中も色々とご支援、お力添え、ありがとうございました。
皆さんにお願いがあって、メールをさせていただいています。

化学物質の多用による、子どもたちの健康上の現れが心配されるようになって久しいですが、
この件に関しては、文部科学省はすでに、子どもの発達について詳細な就学時調査と
化学物質と脳機能への影響について、5大学での研究報告を受け取り、
事態の深刻さを把握して、2007年『支援教育法』を制定し、政策的な対応を取ってきました。

しかし、それは発達に支障をもつ子どもたちを支援する政策に留まっており
化学物質による健康リスクを減らすという根本的な対応を取られることはありませんでしたが、
2004年より環境省内で調整を進めていた『子どもの健康と環境に関する全国調査』が、
事業仕分けも『重要な調査』という評価を受け、無事、実施が決まり、
2010年7月より、全国15の研究施設で妊婦さんの登録が開始されました。

残念ながら、静岡県内では調査実施機関に選ばれた病院がありませんので、
静岡県の妊産婦さんには登録をしていただく事はできませんが、
この調査は、妊産婦さんに協力を依頼し、了解を得られた妊婦さん(7~10万人登録予定)の血液検査や生活習慣、夫の健康状態などを把握しながら、
研究対象となる化学物質の測定値を把握し、生まれてきた子どもが12歳になるまで、
長期にわたって子どもの身体的、精神的な発達や、運動能力、学力などの総合的な発達状況を調査し、化学物質と子どもの健康の関連性を研究する大規模調査です。

調査は、大規模で長期の観察が必要になりますので、
国民の高い関心が得られなかった場合、
『環境化学物質と子どもの健康に関する調査』の結果を受け入れたくない企業や研究者などの
恣意的な国への働きかけが行われる事も予想されます。
その場合、「財政的な措置が見送られる可能性も大きい」と研究機関の連絡会でも懸念が表明されています。

このため、
環境省では、多くの人に関心を持ってこの調査を見守ってもらえるように、
昨年12月より、
「子どもの健康と環境に関する全国調査」のサポーターの募集を始めました。
http://www.env.go.jp/chemi/ceh/
皆さんへのお願いが遅くなりましたが、
上記の『エコチル調査』HPにアクセスしていただくと、
サポーター登録が簡単に出来るようになっています。

サポーターに登録していただきますと、
『エコチル調査』の経過や、ニュース、学会の開催案内も届きます。
是非、多くの方に参加いただき、この調査がしっかりと遂行され、
未来の子どもたちが健やかに育つ社会を実現するための『政策提案』がまとめられるように、
応援と関心を寄せていただけますよう、お願いいたします。

『化学物質と子どもの健康』は私の生涯のテーマとして、活動を続けています。

12年後、この調査結果がまとまるまで、皆さんのご支援をよろしくお願いします。

また、皆さんの周りに方で、この『子どもの健康と環境に関する全国調査』に関心を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、『エコチル調査・サポーター』登録のご案内をいただければ、幸いです。

 

<追伸>
エコチル調査の資料、(A),(B)が必要な方は、ご連絡下さい。メール添付にて、お送りします。

 

(A)『子どもの健康と環境に関する全国調査 (エコチル調査)基本計画 』
平成22年 3月30日
(B)『子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査) 仮 説 集』
平成22年 3月30日

 

また、『脳の機能発達と学習メカニズムの解明』については、以下の研究機関HPにて
http://www.brain-l.crest.jst.go.jp/index.htm
ご覧いただけます。

 この情報をお友達にお伝えくださる方は
下記のメール添付やプリントアウト用ワード原稿をご活用下さい。
『子どもの健康と環境に関する全国調査』に関心を持ってくださる方へ

 

最終更新 2011年 8月 21日(日曜日) 06:22
 

発達障害のリスク調査について~(その3)

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2009年5月28日記
環境カウンセラー 馬場利子(静岡市在住)

化学物質の脳への影響


 前回までに、化学物質と子どもの健康について、リスク評価を行うために、 環境省が2010年から6万人の妊婦を対象に、母親の化学物質汚染濃度を測定し、その後、生まれてきた子どもの体内化学物質濃度と発達状況を12年間、追跡調査をする事をお伝えしました。

 

  (調査の詳細は環境省の http://www.env.go.jp/chemi/ceh/gaiyo/ 参照)

環境省は、2007年の検討委員会立ち上げから2025年の「小児の発育の影響を与える環境要因の解明」 の中間取りまとめまで、毎年、多くの税金を使ってこの調査を行う訳ですが、それに先駆けて、昨年12月14日、15日には環境省主催で『化学物質の環境リスクに関する国際シンポジュウム』 が開催され、アメリカ、オランダ、韓国、デンマーク、ノルウェー、香港など各国の研究者と日本国内の研究者が 化学物質と子どもの健康について多くの研究が発表されました。

 そのシンポジュームでは、化学物質による小児の喘息、先天性欠損(口蓋裂、尿道下裂など)、ダウン症、読字障害、注意欠陥多動障害、自閉症、統合失調症、肥満、異常な出産の増加が数字を挙げて報告されました。

 このような健康被害が医療の現場で分かっていたならば、被害がこれほど大きくなる前に、なぜ、医学の専門家や行政関係者は、将来起こるであろう子どもの健康リスクを下げるために、原因を究明しようと努力しなかったのか、残念でなりませんでした。

 専門家や行政、政治に任せていては、未来のために今、出来る事を逃がしてしまうとさえ、感じました。
と同時に、今まで私たちが“健やかな命を繋ぐ暮らしと環境”について、学び、 必要の無い化学物質を買わない、使わない暮らし を心がけてきたことは、間違ってはいなかったのだと、確信する機会となりました。

 化学物質が、地球の生命史上、かつて無いほど蔓延し、健康被害を及ぼしている事は、子どもや人だけでなく全ての命を脅かしている事は間違いありません。

特に化学物質の影響をより大きく受けるのは、こらから生まれてくる命(胎児期から新生児期)ですが、その影響は、先天的な身体的奇形と脳の機能障害として起こる読字障害、注意欠陥多動障害、自閉症、統合失調症などの発達障害といわれるものがあります。

 

発達障害の子どもとどう育ちあうか
 私は、25年前、長男が乳児だった時に、ドイツの母乳のダイオキシン汚染データを知って自分の母乳を測定したことから、母乳のダイオキシン汚染の現実と向き合わねばならなかったのですが、その頃、すでにアメリカでは、母乳の汚染と乳児の健康リスクについて、今、日本で問題となっている発達障害児の1原因となる可能性について指摘する研究論文がありました。

 その論文を読んで、私が強く不安に感じた事は、身体的障害は医学的にも教育システムも、社会制度として対応が進んでいましたが、コミにケーションや感情、行動、思考、学習などの障害は、社会的な生活を余儀なくされる人間にとって、身体的障害よりも大きな問題を抱える事になるだろうという事でした。

 環境汚染から考えれば、わが子がそうした障害を持つ可能性と、他の子どもに障害が現れる確率は全く同率で、どの子がそうした障害を得ても不思議はないと思われました。

 このままの暮らしを皆が続ければ、障害を持つ子どもの数は確実に増えていくに違いないと感じた私は、25年前から、化学物質と子どもの脳の発達(発達障害)について関心を持ち、生活者自らが、出来うる限りの予防原則に則って、 化学物質の使用を減らして暮らすように活動を始めたのでした。

 しかし、現実には、環境省の国際シンポジュームで指摘されたように、環境に潜む化学物質はすでに多くの子どもたちにリスクを背負わせることになってしまいました。


 そこで、私から2つお願いがあります。
 1つは、当然のことながら、今まで通り、暮らしの中で化学物質の使用を極力減らし、さらに、命を脅かす環境汚染を無くしていくように、周りの人々に環境省が報告している 『化学物質の環境リスク』 について伝え、共感してくださる人が自立的に暮らしを見直しいけるように、手を繋いで欲しいという事です。

未来を創るためです。

 

 2つ目は、もし、皆さんの周りで、すでに発達障害と診断されたお子さんや、思考的、生活的に発達に障害が見られる子がおられるようでしたら、その子にはどのようなサポートや協力が必要なのか、保護者の方とフランクに話せる関係、地域力を養う努力をお願いしたいという事です。

これも、未来を創るためです。

 

 今は、小・中学校には必ず1校に1人“支援教育コーディネーター”の教師がおかれる取り決めになっています。
しかし、専門の教育を受けた支援教育コーディネーターの教師は、まだ、1県に何人も居ません。
ですから、発達障害について理解していない教師も多く居ます。

 発達障害の子どもたちにとって、誤った自己評価を下されたり、周りの人の無理解からくる言葉の暴力は、自尊心を傷つけられ、自己肯定の心を失って、被害者意識に固まったり、孤立感から社会生活を否定し、引きこもったり、社会そのものに対して攻撃的な行動をとる二次障害を起こす原因となると言われています。

 社会と無縁で生きられる人はいません。人と人の関わりの中で、どう幸せに暮らしていけるか、精神的な人為的環境を理解していく努力がこれから大きく問われていくと思います。

 生きにくい子どもたちの育ちを見守る中で、私たちが社会の中で何を必要としているか、新しい発見をしながら社会を創っていきたいと切に願います。
 皆さんと一緒に・・・。 

最終更新 2011年 8月 21日(日曜日) 08:18
 

発達障害のリスク調査について~(その2)

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2009年2月27日・記
環境カウンセラー 馬場利子(静岡市在住)

化学物質の脳への影響

前号で化学物質と子どもたちに多くなっている発達障害の機序について、お話しましたが、発達障害のスクリーニングは3歳児検診や就学時検診で、チェックするようになっています。
それだけ、発達障害児が多くなっているという事と早期発見によって、個別の支援教育を始めるために行われます。

 

発達障害はどうして起こるのか
発達障害は胎児期の妊娠3週から4週前後に、化学物質によって脳の細胞の発達を阻害するために起こる脳の機能障害で、障害を受けた脳の機能は医学的には良くも悪くもならないと言われています。

 なぜ、化学物質によって、脳が傷害されるかといえば、胎児期に脳が作られる時期に、自然な脳の発達に必要な体内物質が、外部から取り込まれた化学物質によって、疎外されるために起こることが分かっています。

脳の機能は多岐にわたっていますから、知能、運動能力、情緒、感情、認識、記憶など、障害の症状は様々、個別の問題を示す事になります。

 

2010年、環境省が大規模な実態調査を始めます
 1997年、先進8カ国の参加による子どもの環境、保健に関する環境大臣会合が開催され、 子どもの環境保健を最優先事項とする「マイアミ宣言」が採択されました。

これを受けてアメリカでは「環境保健リスクと安全リスクに対する小児の保護」が発令され、欧州では、健康影響や健康ハザードから子どもを守るために必要な研究や施策を優先事項とすることが明確化されました。

すでに、アメリカ、ノルウェー、デンマーク等では、国家プロジェクトを開始しています。

日本でも、かなり遅れましたが、環境省が2007年より、小児と環境リスク(化学物質のリスク)をテーマとした全国調査を行うために検討委員会を立ち上げ、化学物質と子どもたちの健康状態の変化について、以下の点が確認されています。

 

  • 免疫系疾患(喘息、アレルギー、アトピーなど)の増加
  • 代謝・内分泌系異常(小児肥満、小児糖尿病など)の増加
  • 生殖異常(不妊、流産、男児の出生率の低下など)の増加<
  • 神経系異常(自閉症、キレやすい子、LD〈学習困難〉など)の増加
  • 先天性の異常(ダウン症,水頭症、尿道下裂など)の増加

  環境省は、2010年から6万人の妊婦を対象に、母親の化学物質汚染濃度を測定し、その後、生まれてきた子どもの体内化学物質濃度と発達状況を12年間、追跡調査をすることにしています。

(詳細は環境省の http://www.env.go.jp/chemi/ceh/gaiyo/ 参照)

 環境省は2007年の検討委員会立ち上げから、2025年の「小児の発育の影響を与える環境要因の解明」 の中間取りまとめまで、毎年、多くの税金を使ってこの調査を行う訳ですが、その目的の1つに『化学物質規制の審査基準へ反映』する事が挙げられています。

 国が企業活動を規制したり、化学物質の排出抑制を法的に行うためには、科学的に、人的被害を証明する必要があるため、このような調査が必要となるわけです。

 いのちと環境に関心を持っている私たちにとっては、「今頃ですか?!」とため息が出てしまうのですが、 国が調査をするということは、すでに被害や障害を放置できないほどになっているという証し でもあります。

 

国の規制を待つまでもなく、化学物質のリスクを減らす暮らしを!
 暮らしの中の化学物質は子どもたちの健康に影響を与えているだけでなく、動植物にも大きな影響を与えている事は、すでに多くの科学者が指摘しています。

レイチェル・カーソンが『沈黙の春』を現したのは、1962年。
DDTを始めとする農薬 などの化学物質の危険性を、鳥達が鳴かなくなった春という表現で、私たちに未来の地球の姿を警告してくれましたが、その言葉に耳を傾けて、暮らし方を見直してきた人々と、全く関心を示さなかった人々がいました。

 自分たちの健康に直接、被害が及ばなければ『無害』とする考え方は、致死量や安全基準値以下であれば安全としてきた国の考え方と同じですが、 1997年以来、農薬などの化学物質は、安全基準値よりはるか微量であっても作用を及ぼすという『環境ホルモン作用』が、科学的に証明されるようになっています。

 

 

人や環境に影響を及ぼす化学物質の代表的なもの
★合成洗剤 ★農薬 ★塗料 ★化粧品 ★薬 ★食品添加物など

 

 

 合成洗剤は環境ホルモン作用があると、環境省も指摘しています。
合成洗剤は水中生物を殺すだけでなく、精子を殺傷する作用もあります。
いのちや細胞を殺す物質が、人に安全であるという事は、考えられません。
同じように農薬についても、化粧品についても、薬についても、そのリスクをちょっと考えてみると・・・不安なものは使わない、 というとても簡単な暮らし方が見えてきます。

1人、1人が暮らしの中で出きることを!

 

発達障害の2次障害を未然に防ぐためのリハビリ教育の重要性
 化学物質による様々な健康被害の中で、私が長い間、一番憂慮して関心を持って追跡研究をしてきた問題が、『発達障害の子どもたち』のことでした。

 発達障害の人に総てに該当する症状が『言語障害』(言語認識力の未熟さ、言語化の未熟さ)であると医学的に言われています。

 発達障害は子どもたちだけでなく、大人にも見られる(現在、40代の人でも4~8%)といいます。

 言葉の認識力不足は、人と人が理解しあったり、相手の事を思いやったりする『心の交流』を困難にするだけでなく、本人の孤独感、疎外感は計り知れず大きいと思われます。

 子どもへの虐待や利己的な犯罪を起こす人の中には、発達障害であることが分からないまま放置された結果、社会的適応が困難となり、反社会的な行為に及ぶ事も指摘されています。
この点については次回、お話してみたいと思います。

 

 

 

最終更新 2011年 8月 21日(日曜日) 08:09
 

化学物質の健康への影響と上手な付き合い方

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2009年2月11日  馬場利子

~環境省 化学物質のリスクに関わる国際シンポジュームを受けて~

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最終更新 2011年 8月 21日(日曜日) 07:54
 

発達障害のリスク調査について~(その1)

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2008年12月23日

環境カウンセラー 馬場利子(静岡市在住)

化学物質の脳への影響

 近年、文部科学省は、学習困難な子どもたちの増加に対して、指導方法や学習支援制度を作り、発達障害や情緒障害の診断について、現場である小中学校へ様々な通達を出し、対応をしていますが、地域の中でも、『発達障害』という言葉を聞くことが多くなっているように思います。

少し前まで、授業中に勝手に席を立っていってしまう子や、友達と上手く会話が出来ない子、自分勝手な行動をする子は『親のしつけが悪い』と家庭教育の問題のように言われていましたが、現在では、そうした子どもの行動は『脳そのものの微細な障害による機能不全の現れ』である事が分かっています。

 

子供たちの脳に今、何が起こっているか?
1つのデータとして、2002年の文部科学省の調査では、東京都の就学全児童の6.7%(17人に1人)に軽度発達障害が認められると報告しています。

 発達障害は脳の機能が造られる胎児期に神経回路が正常に作られず、 特定の行動がうまくできなかったり、学習の能力にバラつきがでる状態なのですが、文部科学省は発達障害が子どもたちに多く起こる事態を重く捉えて、 2001年から2006年に『化学物質の脳への影響』 の研究を黒田洋一郎博士ら5大学の研究グループに依頼して報告をまとめています。

この研究は胎児期の脳の発達を阻害する物質の作用について知ろうとしたもので、研究の内容は、

①甲状腺ホルモンに似たPCBが知能低下、発達障害などを起こす物質であること。

②殺虫剤の成分であるピレスロイド(匂いのない防虫剤の成分)が、学習などのあらゆる後天的行動の獲得を阻害すること。

③農薬が脳の情報伝達をする神経シナプスの発達を阻害することなどが報告されています。

 

脳の発達と環境化学物質
人間の脳は数多くの生体化学物質の反応によって学習や運動、行動、感情のコントロールなどを可能にしていますが、体外から人工的な化学物質が入り込むと脳内の生理的な反応が撹乱されたり、脳の発生時期に神経を障害したりする事が明らかになりつつあります。
生理的な脳内物質と外因性生体攪乱化学物質の問題は、環境ホルモンの問題と全く同じ問題であるといえます

化学物質と生物の健康について、少し情報を整理する事によって、健やかな命を繋ぐ事ができる事を願って、詳しいお話は、次号でお伝えさせていただきます。

最終更新 2011年 8月 21日(日曜日) 07:59
 


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