2007年3月1日 通信より
食べ物の知恩・・・(転載記事) ≪短命の食事 長命の食事≫
丸元 淑生 まるもと よしお
1934年大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。
アメリカで行われた最近の調査で、アメリカ人が食事で取り込んでいる殺虫剤(農薬)は、55%が肉からであることが明らかになっている。
23%は乳製品から。11%が野菜・果物・穀類からである。
農薬は、脂溶性の化学物質だから、食物連鎖の頂点に立つ動物の、脂肪組織に濃縮されていくのだ。 野菜には農薬が付着しているような感覚を持っている人が多いと思うが、洗って食べれば、葉野菜に含まれている農薬の量は、肉の40分の1なのだ。
肉を多量に食べる食事は当然、短命の食事になるけれども、取り除ける脂肪を切り取って食べれば、かなりのリスクを減らすことができるし、脂肪の取りすぎにもならない。
しかし、霜降り肉のように、取り除けない形で肉の組織に脂肪が入っているものは、お手上げである。
肉の脂肪の特徴は、水素原子の数が多い、飽和脂肪酸を高率に含んでいることで、室温で固体状態をなしている。
しかも、融点が32度以下の脂肪酸よりも、44度以上の脂肪酸の数が多いために、人間の体温下でも溶けずに、大部分が固体状なのだ。
こういう脂肪が摂取されるとどうなるかというと、水でできている血液の中に入り込むために、体は微小な粒に砕いて乳化する。しかし、それでうまく循環するかというと、脂肪の粒は粘着性が高いので、赤血球同士をくっつき合わせて団子状態にしてしまう。それでは小さな血管は通れないので、抹消循環が悪くなる。
つまり、肉の脂肪を頻繁に、かつ多量に摂取すると、抹消循環の悪化が慢性化するだけでなく、血液の粘度が高まって動脈硬化が進む。そして、悪玉のLDLコレステロールの量が増加し、健康な人では脂肪の見られない組織や臓器に脂肪がたまっていく。
メタボリック・シンドロームも進むのだ。
このように、肉の脂肪はそれ自体がリスク・ファクターだが、加えて残留農薬の最大の供給源なのだ。最近の研究は、肉の脂肪に含まれる農薬が乳がんの原因のひとつであることを明らかにしている。
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