【事例提供】
石上
・静岡市手越原専業農家 30年無農薬無化学肥料で畑作。
・市内の消費者グループに野菜を提供している。
・10年ほど前からEM資材と出会い、生ゴミを堆肥化して畑に還す農法で、病害虫に侵されることもなく良い
作物を収穫している。
・地域の子ども会とサツマイモ掘りを10年以上続けている。
・市内のレストランと提携し、無農薬野菜を使った料理教室に材料を提供している。
・収穫作業を体験してもらうことによって、生産者にとっては当たり前のことを町に住む消費者がとても
喜んでくれる経験をし、それが生産者の喜びともなった。
生産者と消費者がつながる活動ができるのではないかと考えている。
日比野
・縁農隊は静大農学部のサークルで市内の10軒ほどの農家の作業を手伝っている。
・農家から事前に手伝いの依頼が来て、1日2,000円でボラバイトしている。
・縁農隊のメーリングリストに100名の登録があり、実質30名から50名が活動。
・昨年の12月には述べ30名がみかんの摘果作業を手伝った。
・若者と触れ合うことができると農家には喜ばれている。
・農学部の学生にとって農家の方の話しが直接聞けるのは貴重な体験で、卒業して静岡を離れた後も、
ふらっと立ち寄ることができる関係ができていてうれしい。
竹内
・清沢塾は、静大の50周年を記念して開かれた公開講座で静大中井教授と自然農法家の川口由一さんとの
対談がきっかけとなり、2000年の6月にスタートした。
・会員30人ほどで棚田の景観の復元と中山間地の里山の自然保全を目的に活動している。
・静岡市相俣の棚田24段を復活させ、無耕作、無農薬、無肥料で稲作をしている。
・3年目でホタルが自然復活した。
・地域の子どもたちが田植えや稲刈りを通して自然と触れ合える場所にもなっている。安全な農作業が
できる場所がある幸せを感じている。
【助言者のコメント】
◇石上さんの事例
・農家が外に向かって発信すると、返ってくるものが多い。今まで農家は生産のみに携わり流通は農協に
任せていたので、消費者の声が聞こえる一番美味しいところを農協に持って行かれていた。
石上さんは直接消費者とつながっていて、すばらしい発信者となってくれるだろう。
◇日比野さんの事例
・2,000円のボラバイトを作物の現物支給にしてもらうと、農家の負担が減る。
・卒業後も縁農隊の学生が農家に立ち寄るように、消費者にとって農家が心と身体のふるさとでいたい。
私たちの体は食べものからできているのだから、農家もきちんとしたものを作る。
◇竹内さんの事例
・ホタルとか蛙は日本の原風景である。この原風景を守る小規模農家が地域の環境に貢献できる。
◇その他
・「土」のチカラを環境保全の視点で考える
○耕地面積の狭い日本では単品大量生産は難しく、多品目・少量生産で自立できる農業を目指したい。
○農家が自分を含めた消費者が食べたい安心安全な農作物を作り、近隣の消費者に提供する地産地消で
自立することが望ましい。
○そのためにバイオマスなどを活用し自然と共存する有機循環農業を提案する。
○福津農園の水田の生産物は米だけでなく、たくさんの動植物、夏の涼しい風、きれいで豊かな地下水、
美しい農村の景観にまで及ぶ。
○有機循環農業は地球環境を守るボランティア活動だ。
【質疑応答】
Q.地域で退職者の働く場所を作りたい。その際農業をする上での心得は?
A.余った農地を利用して退職者の1%が農作業をすると、日本の自給率が高まる。
休耕田の利用を行政に働き掛けてみてはどうか。
自分で作ってみると、孫には無農薬のものを食べさせたいとおもうだろう。
Q.ヨトウムシの被害で困っている。
A.以前はハチなどの天敵がいたので今のような大発生はしなかった。しかし大発生の
翌年は被害が少ないことが多い。
Q.カメムシの被害についてはどうか?
A.カメムシはスギやヒノキの中で育ち、里に下りてくるので、里山がバリアに
なって害にはならなかったが、里山の減少で棲み分けができなくなっている。
山の人と連携して間伐材で小屋等を作り山を整備することも大事。
【感想】
コメンテーターの皆さんが農業を通じて喜びを分かち合う話をされたことが印象に残りました。
次世代の子どもたちに残す地球環境を守るために、有機農業がボランティア活動となることも教えられました。
そして、有機農産物で家庭の食卓を彩ることは、私たち消費者にできるボランティアを支えるボランティアに
なると思いました。
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